この空の下で
 どこに行ったのだろうか。私は要の行きそうなところを探したが、どこにもいない。なぜか今は土手の上を歩いていた。風に押されてこの土手を歩いていたら、ここにたどり着いたのだ。

 今頃、葬式はどうなっているかなぁ、なんて思いながら、辺りを見晴らす。すると土手の中腹に、一人の人が座っていた。風が吹くと、学ランが、川に流される太陽のように揺れた。

 そして私は土手の中腹に下り、要の横に座った。

「どうしたの」

「何か…あそこにいるべきじゃないと思った」

 要は足の中に埋めてた顔を上げた。

「俺…なんか生きていく自身なくしちゃったな…」

「馬鹿、あんたがそんなに弱くてどうするの。母さんだって天国に行くにも、まともに天国に行けたもんじゃないよ。成仏できないじゃない。もっと強くなりなよ。母さんはきっとそんな要の姿を望むよ」

「…そうかもな」

 要は足を投げ出し、風が走る草の上に寝た。

「んん…気持ちいいな…お前もやってみろよ」

「うん」

 私も要に続き、大きく腕を伸ばし、足を投げ出す。

「本当だ、気持ちいい」

 しばらくそのままでいると、葬式のことを忘れていった。

「ところで、なんか俺達、血縁がないみたいだな」

「うん」

「昔のこと思い出すと、なんか恥ずかしくなるよな」

「うん」

「一緒にスイカを食べたり、一緒の部屋に寝たり、一緒に風呂に入ったり…そんなことより、お前、中一の頃に、一緒に映画に行ったろ。その時さ、お前、俺の手握ったんだぜ。覚えてるか」

「え…」

「お前…俺のこと好きなのか」

「馬鹿、なんてこと言うのよ」

 私は急に顔が赤くなったのが分かった。しかし横で笑う要を見て、必死に冷静さを保とうとした。

「そんなことより、母さんは何で死んじゃったのかなぁ」

「さあな。ただ、素直に死を受け入れたんじゃねぇの。もし、生きてたとしても、きっとろくな人生がなかったと踏んだんだろ、きっと」
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