この空の下で
「ねぇ、まだお盆じゃないけど…」
「分かってる」
車に乗って三十分。俺は父さんに連れられ、墓石所までやってきていた。
墓石所に着くなり、父さんは速い足取りで、墓の間の道を進み、その後を俺が歩く。辺りはまだ夕焼けできれいに赤く染められていた。
そして毎年来ている、古葉家の墓の前まで来た。そこには母さんの骨も納められている。しかし父さんはその墓を通り過ぎ、さらに奥へ進んだ。
「え、どこ行くの。通り過ぎちゃったよ」
「いいんだ。いいからついて来い」
十秒も経たないうちに、父さんは知らない墓の前で足を止めた。
「ここだ」
それは今まで見たことがない墓だった。
「何ここ」
父さんは無言で墓の前まで歩き、手を合わせた。そして顔を上げ、俺の方を振り向かずに言った。
「ここはお前の…本当の親の墓だ」
「え…」
そこには「新藤家」と書かれていた。
「父さん…母さん…」
俺は墓の前にひざまずき、墓をなでた。墓は夕焼けのせいなのか、まだ温かみがあった。父さんと母さんはこんなに温かかったのだろうか。俺は父さんと母さんに抱かれた時を想像した。そして俺は墓を抱いた。温かかった。しかしその温かさは、さっき触った時とは違った。肌に感じる温かみではなく、体の芯まで伝わる温もりであった。
死んでいたのには驚いたが、そんなことよりも、再会できた喜びの方がはるかに上回っていた。父さんの強さ、母さんの優しさが遺志として、墓から伝わってきた。
俺はそのままその温もりから離れたくなかったが、今日は会えただけでよかった。どんな形でも、会えたことはうれしかったのだ。
「また来ます。待っていてください」
そう言うと、俺は立ち上がり、墓に背を向けた。
「分かってる」
車に乗って三十分。俺は父さんに連れられ、墓石所までやってきていた。
墓石所に着くなり、父さんは速い足取りで、墓の間の道を進み、その後を俺が歩く。辺りはまだ夕焼けできれいに赤く染められていた。
そして毎年来ている、古葉家の墓の前まで来た。そこには母さんの骨も納められている。しかし父さんはその墓を通り過ぎ、さらに奥へ進んだ。
「え、どこ行くの。通り過ぎちゃったよ」
「いいんだ。いいからついて来い」
十秒も経たないうちに、父さんは知らない墓の前で足を止めた。
「ここだ」
それは今まで見たことがない墓だった。
「何ここ」
父さんは無言で墓の前まで歩き、手を合わせた。そして顔を上げ、俺の方を振り向かずに言った。
「ここはお前の…本当の親の墓だ」
「え…」
そこには「新藤家」と書かれていた。
「父さん…母さん…」
俺は墓の前にひざまずき、墓をなでた。墓は夕焼けのせいなのか、まだ温かみがあった。父さんと母さんはこんなに温かかったのだろうか。俺は父さんと母さんに抱かれた時を想像した。そして俺は墓を抱いた。温かかった。しかしその温かさは、さっき触った時とは違った。肌に感じる温かみではなく、体の芯まで伝わる温もりであった。
死んでいたのには驚いたが、そんなことよりも、再会できた喜びの方がはるかに上回っていた。父さんの強さ、母さんの優しさが遺志として、墓から伝わってきた。
俺はそのままその温もりから離れたくなかったが、今日は会えただけでよかった。どんな形でも、会えたことはうれしかったのだ。
「また来ます。待っていてください」
そう言うと、俺は立ち上がり、墓に背を向けた。