この空の下で
 太陽がもうあんな高い所にある。

 その時、雄治はコンクリートで固められた崖の脇を歩いていた。コンクリートの崖を見て少し不安になった。そして崖を見まいと今度は車道のほうを見ると、さらに不安は大きくなった。そこには血を流さない猫が横たわっていた。そして車はその猫をまたいで急カーブをものすごいスピードで曲がっていった。

 それを見た雄治は思わず息を飲んだ。

 そしてその歩道を足早に歩くのであった。ただ、早くその場を離れるように努めるだけであった。


 この辺の家は百メートル間隔に離れて建っている。もしかしたら二百メートル以上は離れているかもしれない。いかにも田舎道を漂わせる畑や建物の少なさがその証拠だ。時々コンビニがあると思ったら、その先には何もない。その前に学校とコンビニがあるだけだった。雄治はそんな道をのんびりと歩いていた。そしてその先は何もない。このまま延々と続きそうであった。  交差点を渡り、さらに道に沿って直進する。

 そして全く人通りがなく、車も通らない場所に来てしまった。心配になった雄治は、また地図を取り出した。

 ああ、あの道を左に曲がるのか。そう思うと、雄治は地図と対比させて、前方の左にある道を見た。歩くのにそれほど遠くない道であった。

 その道の前まで来ると、その道は意外と急な道で、登るのに苦労しそうだった。両サイドには青々とした植物が立っていた。その間には青い空が細長く広がっていて、その先には池のように丸く広がっている。そこに二羽の鳥が戯れ、泳いでいた。そしてそこには、なぜか懐かしい匂いが漂った。太陽も雲に笑いかける。歩くのが楽しくなってきた。

 しかしいざ歩くというと、やはり一歩一歩が重かった。その短い距離でも、十分に足に応える。登山でもするような足運びであった。

 そしてやっとのことで、ひらけた所に出ることができた。そこには一人の女性が箒で落ち葉を掃いていた。彼女が庄野であろうか。
< 21 / 173 >

この作品をシェア

pagetop