この空の下で
「すみません、先程電話した古葉と申しますが、あなたが庄野さんでしょうか」

 女性はこちらに気付いてこちらを見た。若々しい顔つきで、まだ二十代だと思われる。その体には、黄色いエプロンを身にまとっていた。

「はい、そうですが…」

 彼女は少し不思議そうにこちらを見た。

「失礼ですが、どこかお会いしたような気がするのですが…」

 そういえばどこか遠い昔にあった憶えがある。誰であろうか。庄野ははっとしたような顔をした。そして興奮するように質問をした。

「もしかして、雄治くん?」

 どこかで聞いたことがある発音、響き、そして優しさ。しみじみと耳にしみる。そして雄治は思い出した。

「もしかして庄野…葵さん?」

「はい」

 彼女は笑ってそう言った。彼女は小学生以来の旧友である。

「久しぶりだね、何年振りだろう」

「ああ、そうだな。本当に…懐かしいな」

「ふふ、すっかりおじさんになったね…会えて嬉しいよ」

 彼女はほころんだ。

「俺もだよ…」

 二人はしばらく沈黙した。そして雄治が葵に話しかけた。

「で、何してるの…こんなところで」

 葵はびっくりした表情をした。

「そこから入る、普通。相変わらず、話すのだけは苦手みたいだね」

 そう言うと、突然笑い出した。少し恥ずかしくなった雄治は、別の話題を探したが、見つかるはずがなかった。そして葵が切り出した。

「何してるって、ここで仕事」

「えっ、ここで。ずいぶん昔と変わったな。昔は『私は看護婦になるんだ』とか言ってたのにな」

 今度は雄治がからかった。
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