この空の下で
「そんなこと無いわよ。人の面倒を見る面では一緒だもん」

 葵は頬を膨らませた。すると、一人の女の子が玄関から出てきて、葵に走り寄った。

「せんせい、まことのやつ、また、やっちゃったよ」

 息を荒くしながら、途切れ途切れに言う姿がかわいい。そしてこちらを見ると、葵のエプロンにしがみついて言う。

「せんせい、このひとだーれー?」

「この人は私の友達よ。さ、中に入ってなさい、すぐに行くから」

 女の子は家の中へ走っていって、わぁーと叫ぶ。そして葵と雄治はその姿を見届け、葵はこちらを見る。

「ところで雄治君、何か用?」

 話を忘れてしまったのか、うきうきしたように聞いた。そして気づいたように、はっとしたような顔をした。

「ゴメン…さぁ、入って」

 葵はひどく落ち込んだように、とぼとぼと玄関に向かった。そしてその後に雄治が続く。しかし、雄治は葵の近くに歩み寄り、肩をポンとたたく。

「ま、気にするな」

 葵の顔が風に軽く揺られた。


 暗い板張りの廊下を歩くと、ひとつの交差点にぶつかる。葵が先行して歩くと、二人の男の子と、さっきの女の子が目の前を横切った。どうやら追いかけっこをしているようだ。そして走っている二人に気づいた葵が注意する。しかし子供たちは笑いながら注意を聞き流す。やれやれ、とした顔をして葵の顔はやつれた。そして葵は再び歩を進めると、その後を雄治が追う。縁側を通り、ひとつの部屋に通された。

「雄治君、ここで待ってて」

 そう言い残して、すぐに来た道を戻った。多分さっきの女の子が言っていた、まこと君のことだろう。
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