この空の下で
「そういえば、なんだかあの夢、変だったのよね。子供の人数が一人じゃなくて、二人だったのよね。私達がもらう養子は一人なのに、変な夢ね」

 芳江クスクス笑っていたが、雄治の顔は、不穏に包まれた。今、ここで切り出すのは少し嫌だったが、先程の決意を思い出して話を切り出した。

「あのさぁ、芳江、ちょっと話があるんだけど…」

「なーに、そんな変な顔をして」

 芳江はまだこの事態に気付いていないためか、まだちょっとした興奮が、残っているようであった。さっきとは大違いだった。この表情をいつまでも残しておきたかったが、いつか言う必要があったのは分かっていたので、そんなことを無視するのは、少し胸が痛かった。

「実は…」

 三度目の話だったので、スムーズに話が進んだ。芳江の顔は話が進むに連れて、険しくなってきているのが分かった。その顔尾を見るたびに、芳江の目を避けながら話を進める。話が終わると、芳江は口を抑えてうつむいていた。しばらく話さないだろう、と思っていたので、沈黙を守ろうと思っていたが、先に芳江が話を始めた。

「で、雄治はどう思うの。その子について」

 芳江はうつむいたままから顔を上げた。その表情からは無理だといっているのが分かったが、自分の気持ちを押し通した。

「オレはその話に乗りたい。兄妹にすれば何かと成長もよくなるし、子供たちの心も安定すると思う」

「経済的に考えたことある?気持ちだけじゃ到底育てることなんて無理なのよ。むしろ私たちの生活だって危うくなるのよ」

 芳江は一向に食い下がらない。しかし、ここで雄治も負けるわけにはいかなかった。ここで負けたら、その子の親の意思を踏みにじることになる。

「もともと俺たちは子供が二人生まれる予定だったはずだ。だから…」

「もうその話はやめて。お願いだから」

 芳江はぴしゃりと言った。そして突然しゃくりを上げて話し始めた。

「もう…いいよ。分かったわ、私の負け…ね。あーあ、もっと強くなりたいなぁ。そうずればこんなことにならなかったのに…見た夢って、このことの前兆だったのかなぁ」
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