この空の下で
「ごめん」

 深雪は洗面所に行き、手を洗った。

 僕は一応、と再びトイレに入った。

「早く出てきてね」

 ドア越しに深雪の声が聞こえた。

 先に行けばいいのに、と思いながらも、僕はその言葉に従った。


 二人が部屋に戻ると、深雪はそそくさと布団にもぐった。僕も布団にもぐった。

 そして深雪は顔を出して、僕に言った。

「ありがとね」

 深雪は照れくさそうに言った。僕も照れてしまった。そして深雪は続ける。

「要さ、いきなりだけど、なんで廊下を歩いて通れるわけ?」

 僕はどう答えようか迷った。神様のおかげと言えば、また馬鹿にされるかもしれない。しかし簡単な返答を思いついた。

「ヒミツ」

「えー、なんで。教えてよ」

 僕はそれ以上言わなかった。深雪もそれを察したのか、すぐに質問をやめた。そして深雪は寝やすい体勢を作った。僕は目をつむり、知らないうちに意識が遠くのほうへ行くのを感じた。


 僕は目を覚ました。

 そしていつものようにトイレへ向かう。

 トイレで用を足して水を流した時、僕はひとつの好奇心に駆られた。僕は知らずに興奮をしていた。
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