この空の下で
 知らずのうちに、例のふたに手をかけていた。そしてそれを持ち上げようとしたその瞬間、開いている窓からビュッと風が吹いた。僕は思わずふたから手を放した。そして僕は怖くなって、すぐにその場から離れた。とりあえず洗面所へ行き、手を洗ってから顔を洗った。僕の呼吸は乱れている。そして僕は何度もうがいをした。呼吸が整うと、大きく深呼吸をした。その後、鏡の中の自分と目を合わせる。もう大丈夫だ。さっきのは偶然だ。単なる偶然。僕はそう思うことで安心した。そしてふーと息を吐く。

 落ち着いた僕は家族と朝食が待つ居間へと階段を下りていった。

 僕はそれ以来、例のふたを開けようとは思わなくなった。神様は見るものではないし、見つけようとするものではない。ただ単にそこにいて、僕らを守ってくれるものだ。そんなことを思っていても、忘れたころには再び好奇心に駆られるものである。


 小学校に入学して、初めての夏休みになった。

 僕と深雪は初めての夏休みに興奮した。夏休みの前日は眠れなかったほどだ。その前夜は、僕の鼓動が高まった。明日は何しようか、宿題は明日のうちにあそこまで終わらせよう、と布団の中で考えていた。毎晩毎晩そういうことを考え、想像した。

 暑い日が続くある日、僕は留守番をすることになった。深雪は友達の家へ遊びに、父さんと母さんは買い物をしに行った。母さんは僕を誘ったが、僕は断った。なぜなら僕は、昨日、母さんが牛乳の賞味期限が過ぎていることに気付き、今朝に捨てようとしていたのだが、僕はそれを知らずに飲んでしまった。なので、腹をこわしてしまったため、トイレにいなければならなかったのだ。
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