この空の下で
 僕はぞっとした。そしてその場から退いた。背後の壁に背中が張り付く。

 しかしその反面に、僕の心にはまだ小さな欲望があった。見てやりたいという欲望だ。

 やはり僕の心は変わらなかった。僕はもう一度例のふたに手をかけた。僕はふたをゆっくりと持ち上げる。そのふたはずっしりと重かった。僕に向かって吹く風は無く、なんの妨害も無かった。

 胸の鼓動がさらに高まる。

 僕は完全にふたをはずし、家を覗いた。そこには風船のような丸いものがあった。

 僕は試しにその風船をつついてみる。すると、左にあるパイプから勢いよく水が出てきた。僕は慌てて風船から手を離した。水は止まったが、袖がぬれてしまった。

 こんなものだったのか。僕はがっかりしながら、例のふたを閉じた。


 僕は部屋に戻り、夏休みの宿題の絵画をする。

 一時間、二時間と時間は時を刻む。僕の額からは、じりじりと汗が流れる。七月に入ってから、毎日のように暑い日が続いている。夏休みに入って三日しか経っていないのに、もうでれでれになっている。

 十一時を過ぎても、父さんと母さんは帰ってこない。深雪はというと、いつも正午を過ぎないと帰ってこない。

 絵の具に使った水が汚くなったので、水を替えに洗面所へ向かった。

 僕は水をゆっくりと流す。すると抹茶色ににごった水が、白いスケート場を回転して流れる。そしてその流れた後に、砂のようなものが跡として残った。僕は洗面所をきれいにし、きれいな水を容器に移し替えた。

 外が暗くなり、すぐに明るくなる。まぶしいほどだ。そしてその明かりのほうを見る。そこにはトイレがあった。すると再びトイレに行きたくなった。

 僕は容器を床に置いて、トイレに入っていった。用を足し、水を流す。そしてまた自分の部屋に戻った。
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