この空の下で
 あれから三十分経ったが、依然に二人が帰ってくる気配は無い。いつになったら買い物から帰ってくるのだろう。僕は終わったというのに。

 僕は再び、水を流しに洗面所へ向かった。

 水をこぼさないように階段を降りていると、遠くのほうから水が流れる音がした。その音は、トイレに流れる水の音だった。

 そして僕は階段の下を見る。するとそこには水が流れていたのだ。

 僕は急いであと一段までのところまで降りた。すぐに洗面所のほうを見る。なんと、トイレからの水であった。トイレから小さな波ができて、あたり一面にその波を送っている。

 一体全体、何が起こったのであろうか。僕の頭は一瞬にして真っ白になった。その場でボーっとして突っ立っていることだけは分かっていた。その他に、僕は今、どうすることもできなかった。

 しかし、僕の頭の中にひとつのことが浮かんだ。

 神様が怒ったのか。

 そういえば父さんの話によると、神様はトイレの水源を守るようだった。しかし僕が例のふたを開けたことによって神様がどこかに行ってしまったのか。

 僕のせいだ。僕は自分を責め立てた。しかし自分を責めてもしょうがない。今は自分ができることをしなければならない。なので、今はひたすら祈るしかなかった。

 お願いします、神様。戻ってきてください。

 しかし水の勢いは止まらない。僕は祈ることをやめなかった。

 お願いします。お願いします。

 水かさは少しずつ高くなってきているような気がした。僕は祈り続けたが、トイレには神様が戻ってはこなかった。
< 57 / 173 >

この作品をシェア

pagetop