この空の下で
「ああ、そうなのか、まったく…」

 父さんは靴を脱ぎ、靴下も脱いで、裸足のまま水の上を歩いた。父さんは僕の前を通り、トイレの中へと入っていった。

 ガコン、と音がすると、水の流れる音が無くなった。

「ふぅ、まったく、要、ちゃんと説明するんだ。分かったな」

 父さんは僕を見て苦そうな顔で言った。僕はゆっくりうなずいた。


 三十分をかけ、やっとのことで床上の水を雑巾で拭いた。

「父さん、ごめんね。こんなことになっちゃって」

 僕は泣きじゃくっていた顔を父さんに向けた。

「ああ、いいよ、やっちゃったことはしょうがないだろ。もう終わったことは悔やんでもしょうがない。なぁ、そうだろ。ところで、どうしてこうなったんだ」

「じつは…」

 僕は今日起こったことをすべて話した。

 すると意外にも、父さんは笑っていた。そして父さんはすまなそうに言った。

「ごめんな、父さんがそんな話をしたから悪かったんだな。ははは…まさか本当に開けるとは思わなかったよ」

 父さんは笑っている。僕はそれがなぜだか分からなかったが、疑問に思っていることを聞いた。

「ねぇ、神様は戻ってきたの?」

「ああ、そうだよ。ここ以外に行く場所が無かったんだよ。他の場所にも神様がいるからな。きっと無いと分かったから帰ってきたんだよ。だけど、家のふたが閉まっていたから入れなくて、こうなっちゃったんだ」

「あー、そうなんだ」

 僕は目を輝かせた。今、僕の家のトイレには神様がいる、それだけが分かっただけでうれしく思った。今では心が晴れ晴れしいほど、今の太陽のように輝いている。あの時の絶望がウソのようであった。僕は今ホッとしている。いろんなことにだ。

 母さんには父さんから話してくれた。

 そして十二時半を回ると、ちょうど母さんが昼食の準備に取りかかろうとした時、玄関のドアが開いた。
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