この空の下で
 私は歯磨きを済ませ、二階に上がった。そして私はすぐさま要の部屋に向かった。私が部屋を覗いた時、要はまだ荷物をバッグに詰めていた。

「要、あれ、見つかった?」

「ああ、あったよ」

「ねぇ、あれって何だったの?」

 要はこちらを見てにこっと笑った。

「教えない」

「何よー、それ」

 要は立ち上がり、本棚から文庫本を取り出した。

「もしかして、あれってそれのこと?」

「違う」

 要は文庫本をバッグに詰めた。そしてすべてが詰め終わったのか、バッグのファスナーを閉めた。

「気になるでしょ。教えなさいよ」

「いやだ」

「私が夜眠れなかったらどうするの」

「どうもしない」

 要はまったく引こうとはしない。しょうがないので、私はちょっとしたハッタリを使うことにした。

「あーあ、明日のこと、ちょっと教えてあげようかなぁて思ったのに」

「え、何かあるの」

 予想通り、要は食いついてきた。

「教えてあげようか?」

「いいよ、別に」

「え?」

 意外な返答に困った私は、もう引くことしかできないな、と思った。私は部屋を出ようかとすると、背後から要の声が聞こえた。

「じゃあ、僕が教えて、お前も教えるんだったらいいよ」

 私はまたこの意外な話にびっくりした。要も少しは気になったのだろうか。そこで、私はそれを機に仕掛けることにした。

「それでいいよ。じゃ、私が後で話すから、あんた、先に話してよ」

「何で」
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