この空の下で
 車は走る、風を切って、どこまでも、どこまでも。

 朝食を食べていなかったので、コンビニに寄り、パンを買って食べた。朝のコンビニや公道には、人も車もあまり見かけなかった。

 途中で墓地に寄ったが、二、三分で用が終えた。そういえば、今日はお盆の最終日であった。

 そして車はいよいよ高速道路に入り、車のスピードは上がった。私の心は喜んでいる。車のスピードが上がると、楽しくなってくる。もしかしたら、海にだんだん近づいている、というワクワクの気持ちなのかもしれない。すれ違う車は光を残して、過ぎ去っていく。私はすれ違う車の数を数えて楽しんでいた。

 すると、高速道路を仕切る、壁の向こうの空が明るくなってきた。そして太陽がさんさんと地上に光を降り注いだ。道路と反対側の道路の間の木は、うれしそうに葉っぱと踊っていた。

 途中にパーキングエリアに寄り、用事を済ませて、車は再び走り始める。

 三時間ぐらい走ると、銀色に輝く光が目に飛び込んだ。海だ。ついに着いたのだ。私は興奮し、寝ている要を起こして、海が近いことを教えた。要は寝ぼけた目で、窓から海を眺めた。少し目を凝らし、目の上に手をかざした。

「きれい…」

 要は素直な気持ちをこぼし、目の前の銀色に輝く海に見とれている。私はたまらなくなって、前方を見て言った。

「あと何分ぐらいなの?」

「うーん、そうだなぁ…保障できないけど、三十分ぐらいかなぁ」

「三十分…」

 私はこんなに近くにある海なのに非常に遠くに感じられた。
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