この空の下で
 車を止めて、私と要は車を飛び出す。背後でお父さんの声がしたので、その場に立ち止まった。お父さんはパラソルとクーラーボックスを担ぎ、母さんはというと、シャベルだけであった。

「早く早くー」

 私は我慢できなくなって、石階段を上がり、堤防の上に立った。

 その景色は夢と同じだった。

 海がそのまま映ったような青い空。パレットから絵の具がこぼれたような真っ白な雲。太陽のように、銀色に輝く暖かそうな大海原。そしてまぶしく光る、白い砂浜。まったく同じ景色が目に焼きついた。ただ、たくさんの人がいるのだけは違った。

「ちょっと待ちなさい」

 今度は背後でお母さんの声が聞こえた。私は一人張り切っていた。要はこちらに向かって歩いているし、お父さんやお母さんだってまだ十メートルぐらい離れたところにいる。

「早くー」

 そんなことを言ってみたが、私はここで待つことにした。来て早々、迷子にはなりたくなかったからだ。

 三人はやっとのことで、堤防に着いた。

「さて、どこにしようか」


 その後は時間も忘れ、海で砂浜で遊んだ。昼はラーメンを食べ、温まった体を海の水で冷やす。お父さんは私たちと遊んでくれたが、お母さんはパラソルの下で、サングラスをかけて眠っていた。そして時間はあっという間に過ぎ、いよいよ上がる時間がきた。まだ日は高い位置にあった。しかし、明日も遊べるということなので、私たちは潔くホテルに向かうことにした。シャワーで体を流し、ホテルに入った。
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