この空の下で
 ホテルは海の目の前に位置し、かなり古い感じがした。悪いと思うが、はっきり言って今にも崩れそうだった。チェックインは僕たちが遊んでいる間に、母さんがいつの間にか済ませていた。僕たちは母さんの案内で部屋まで案内された。

 外見のわりに、中はきれいな和室だった。お盆中なのに、このホテルには客が少ない。やはり外見が悪いのだろうか。しかし父さんと母さんがここにしようとしたのは、やはり価格らしい。そのおかげで二泊できる。

 僕らは荷物を置き、一度座った。そして家族そろって息を吐いた。部屋は冷房がよく効いていて涼しかった。しかし効きすぎて寒くなった。そこで父さんはひとつのことを提案した。

「暇だから、外へ散歩をしに行くか」

 僕はここから出たかったのでこれに賛成した。深雪も賛成した。

「私はパス」

 母さんは畳の上に寝転がった。

 僕と深雪と父さんで、ホテルを出て海岸に出た。赤い夕陽が海を真っ赤に燃やしていた。その中をまだ、泳いでいる人がいる。

「きれいだな」

 父さんは今の気持ちをそっくりそのまま声に出した。僕もその景色を見て、父さんと同じように心が打たれた。

 そして僕たちは海岸の端から端までを一往復した。


 外は少しずつ、闇が迫ってきていた。

 部屋に戻ると、母さんは座布団を枕にして、寝ながらテレビを見ていた。

「お帰り」

 そう言うと母さんはあくびをした。僕も座ってテレビを見ようとした。その時、父さんはまたもや提案をした。

「お風呂行かないか」

「それなら私も」

 母さんは起きて、風呂へ行く準備をする。どうやら風呂へ行かなくてはいけないようになってきた。しょうがないので、流れに逆らわず、なるように任せた。

 僕らは部屋を出て、エレベーターに乗った。

「何階なの?」

 母さんはすでにボタンを押そうとしていた。

「一階」

 母さんはボタンを押した。エレベーターの扉は閉まる。しかし母さんはすぐにあることに気付いた。

「えっ、一階ってロビーじゃない。だいじょうぶなの?」

「一階に降りてから、下に降りれる階段があるんだ」

「へー、変わってるね」
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