この空の下で
 一階に着くと、人はまったくといっていなかった。

 エレベータから降りて、右に歩いた。そして端にある階段を降りて、自動販売機の脇を通り、「風呂」と書かれているのれんをくぐった。

「じゃ、入り終わったら…部屋でいいよな」

「うん、いいよ」

 僕と父さんは「男」と書かれているのれんをくぐった。


 風呂に通じる扉を開けると、室内は湯気で立ち込めていた。

「わー、すげぇ」

 そこには広いジャングル風呂が広がっていた。入っている人は誰もいない。水と水が触れ合う音が、室内に響いた。右のほうには初めて見る、釜のようなものがあった。中を覗くと、お湯が入ってあった。

 後ろからドアの開く音がした。

「父さん、これ何?」

 父さんはこちらに向かって歩いてきた。

「ああ、これか。これは五右衛門風呂だよ。まぁ、ちょっと違う感じがするけど…まぁ、単に釜風呂でいいんじゃないかな」

「へー」

 僕は釜風呂の底に何があるのか見ようとした。

「それにしても広いなー。ここにあるのがもったいないくらいだ」

 父さんは辺りを見回して感心している。

「よーし」

 僕は気合を入れてジャングル風呂へ真っ先に飛び込んだ。


「あー、気持ち良かったー」

 僕はジュースを片手に、自動販売機の前にいる。父さんはトイレで、脱衣所からまだ出てきていない。その前に女風呂から母さんが出てきた。

「あれ、深雪は?」

 母さんは不思議そうな顔をしている。そして男風呂から父さんが出てきた。

「はは、奇遇だな」
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