この空の下で
 峰倉さんはやや身を乗り出し気味で聞いてきた。

 しかし私はこの味に疑問を思ったのか、再び奇物を口の中に入れた。

「ねぇ、どうなの」

 峰倉さんは待てない子供のようになっていた。私はこの味に確信を持てた。

「はっきり言って…おいしいです」

「ホント!良かったー」

 峰倉さんは本当にうれしそうな顔であった。見た目よりも中身とはこういうことだ。

 新しい料理を作るのは楽しいし、その味も楽しみだが、本当においしいかは自分では分からない。よっぽどのことでないと、丹精こめてつくった自分の料理をまずいとは言えない。

 私は箸を止まらせることなく、皿から皿へと動かし続けた。

「どうしようかと思ったのよ。ちょっと見るだけでおなかいっぱいになっちゃいそうじゃない。良かったー、あなたが第一号なのよ、これ食べたの」

 なんという人だ。完全に遊ばれているように思えた。

「またお願いね」

 絶対イヤだ。


「そういえば、久しぶりですね。こう、二人きりで話すなんて」

「そうね。よくよく考えてみれば、外でいつも私たちが二人きりで話そうとすると、高倉さんや久間さんたちが入ってくるもんね。こうやって二人きりで話すなんて、半年ぐらいなかったわね」

「そうですね。」

 私は机の上の紅茶を手にとって、口に流し込んだ。

「ところで、今度、子供たちの運動会があるんですよ。それで、子供に絶対行くって言っちゃったんです。私、病弱じゃないですか。なぜだか知らないですけど、毎年その日は病気にかかったり、つい行けなくなっちゃうんですよ。今年こそ行かなきゃって思っているんですが…どうすればいいのでしょうか。峰倉さんって、けっこう健康体じゃないですか。なにか健康の秘訣でも教えていただければと」
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