この空の下で
「ごはん、できたよ」

 私はできた料理を次々と食卓に並べていく。

 二人は席に着き、手を合わせて言った。

「いただきます」

 私も席に着き、同じ言葉を続けた。

「で、これは…何?」

 深雪は箸で例の容器をさした。

「ん、これ。これは…もらったやつ」

 私は誘惑を感じさせる笑みをつくってみたが、深雪と要はその奇妙な物体に釘付けになっている。私はもう食べたくなかったが、二人に食べさせるために、それを素早くつかんで口に入れた。二人は私の果敢な姿にぽかんと口を開けている。

「んん、おいしい」

「見た目がまずすぎるよ」

 要はきんぴらをつつきながら、素早く突っ込んだ。その通りだと思った。私は当然言い返すことなんてできなかった。私は黙々とご飯を食べ続ける。要と深雪の食器もどんどん空になっていく。何分後のことであっただろうか。一方に減らない奇物をつついていると、深雪がそれにゆっくりと手を伸ばした。その姿を要が心配そうにじっと見つめる。もちろん私もそうだ。箸を噛みながら、がんばれ、と心の中で何回も叫ぶ。とその時、その気持ちが通じたのか、深雪がついにそれをつまんだ。そしてその奇物の汁を机上に滴らせているのに気付かないで、ゆっくりと口に運んだ。口に入れようとすると、磁石が反発するように、本人の本能で拒否している。しかし決心したのか、ついにそれを口の中に入れ、一回、二回とゆっくりと噛んだ。

「どう?」
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