この空の下で
 雄治と要は一生懸命に息を合わせようとしている。なんだかここまでその息が合わせようとするのが伝わってくる。二人は調子よく走って四位を抜き、三位を抜きそうになったが、気持ちが焦ったのか、互いの足が絡み合って転倒した。その時、私はつい大きな声で応援をした。この歓声の中、彼らに伝わるか分からないが、彼らの力になればと必死に叫んだ。五位に抜かれ、六位がすぐそこまで来ていた。そしてそのまま抜かれ、二人はついにビリになった。しかし二人はあきらめずに、再び息をそろえて走り出した。三位までゴールをしたが、四位と五位はまだゴールから離れている。二人のペースは徐々に上がっていき、あっという間に五位を抜かした。そして四位を追う。

 その時、度のずれたメガネをかけているように、目の前がぼやけて見えた。そして後から気付いたのだが、私の目からは、意識もしていないのに、涙がぽろぽろと溢れ出してきていた。なぜだろうか。砂煙は立っていたが、目は痛くない。あくびをしたわけでもない。体に突然、激痛が走ったわけでもない。何か辛いことを思い出したわけでもない。涙腺が、特別に人より、ゆるいわけでもない。しかし、私の目から溢れ出してくる涙は、滝のようにとどまることを知らなかった。いくら涙を拭いても、次々と山水のように湧き出てくるので、ハンカチは汗を拭いたようになっている。

 しかし一瞬だけ、目の前の光景がはっきりとした。二人は着実に四位に近づき、共にゴールに近づいていた。あと少しで追い抜ける。私は液晶から目を離し、生の二人の姿を見た。液晶を通してなんて、もったいなかったからだ。

 涙はすでに止まっていたが、自分では気付かなかった。ただ、よく見えるというのが、継続しているだけであった。しかし、見えるというだけではなく、私の目には、もっと違った見え方で二人が見えた。突然、心が動いていたかのように。
< 92 / 173 >

この作品をシェア

pagetop