君ともう一度~入れ替わってから知った気持ち~

桜木の顔が、悲しそうに、悔しそうに歪んだのを見たら、なんとなく意味がわかった。

失恋の話は、私が聞いちゃいけないことだって。

私の予想が正しければ、今から桜木が言うのは、たぶん…。


「俺…中本のことが好きなんだ…」


ほら、やっぱり当たってた。


自意識過剰なわけじゃない。

けど、恋で苦しい思いをするときは、みんな、さっきの桜木みたいな顔になるから、本当になんとなくわかった。


桜木が私のことを好きなんて、正直まだ信じられない。


さっき、翔磨の話をしたとき、どんな気持ちで聞いてたの?

好きな人が、自分じゃない好きな人の話をしているのなんて、聞きたくなかったよね?

どういう思いで、慰めの言葉をかけてくれたの…?


「…いつから?」

「実は…1年のときから。高山祭の実行委員で頑張ってる姿を見て、好きになった」


去年の今頃から…。

1年間も好きでいてくれたんだ…。


「2年で、また同じクラスになって、席替えで隣の席になって、マジで嬉しかった」

「…うん」

「いろいろ話したりして、どんどん好きになっていった。コンクールの日に話があるって言ってたのも、告白のことだったんだ」

「…そう…なんだ。」


まさか、桜木がそんな想いを抱えてたなんて…。
全く知らなかった…。


「本当は、今日告白するつもりじゃなかったんだけどな。でも、実行委員に誘ってもっと仲良くなってから、いずれは告白しようと思ってた」

「そっか…」


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