君ともう一度~入れ替わってから知った気持ち~
「…どういうこと?なんでアンコンに出たくないの?」
「ごめんなさい。迷惑がかかるのは、わかっています」
「いや、私は理由を聞いてるんだけど」
「ごめんなさい」
何を言っても、謝るばかりの奈実ちゃん。
意味がわからない。
「あのね、こんなチャンスは二度とないかもしれないんだよ?1種類の楽器で出るとか、1年生が出るとかって、異例なの。それだけ、ホルンパートの実力が認められている、ってことなんだよ?」
「はい、すみません」
「謝るんじゃなくて、理由を教えて?」
だんだんイライラしてきても、出来るだけ優しく聞いていた。
けど、それまで黙っていた真優花ちゃんが話した途端、私は怒りを抑えられなかった。
「すみません。先輩達には言えません」
「…奈実ちゃんも真優花ちゃんも、何言ってるの?私やまーちゃんにとっては、最初で最後のアンコンなの。それ、わかってる?」
「…はい、わかってます」
私が怒っていることに気付いたのか、さっきより声が小さくなった奈実ちゃん。
真優花ちゃんはうつむいている。
「それなのに出たくない?ふざけないで。理由は言えない?いい加減にして。本番まで、あと2ヶ月だよ!?2人のわがままに付き合ってる暇なんてない!」
私はそう言い残し、部屋を出て、廊下の端の階段に座った。