君ともう一度~入れ替わってから知った気持ち~

「…今、ここにいない人の悪口を言うのは、良くないと思う」


私がそう言うと、バスの中がザワザワし始めた。


「はぁ?悪口なんか言ってねぇし」

「そうだよー。人聞き悪いこと言わないでよ」

「ってか、あいつが遅れてくるのが悪いんじゃん」


うん。想定内。
怖くない怖くない。

頑張れ、私。


「でも、遅れてる理由もわからないのに、そんなこと言うのはひどいよ」

「いや、だからさぁ。遅れてくるんだったら、普通は連絡するでしょ?」

「なのに連絡しないから、迷惑だなーって言ってんの」

「どうしても連絡できない理由があったら?みんな、そんなの知らないでしょ?」


私が言う。

悪口を言っていた人が言い返してくる。

また私が言う。


そんな繰り返しで、何を言ってもわかってくれない。

いい加減しんどくなってきて、思わずため息をついたのがいけなかった。

それを皮切りに、私への文句が飛んできたのだ。


「うわっ。ため息つきたいのはこっちなんですけどー」

「さっきからさぁ…。お前、山下のなんなの?大して仲良くもないくせに良い子ぶんなよ」

「上から目線でうざい。先生にでもなったつもりですかー?」


…やばい。

こんなに面と向かって言われると、ちょっと泣きそうになってきた。


やっぱり美由希を助けるなんて、私には無理だったのかな…。


< 157 / 163 >

この作品をシェア

pagetop