君ともう一度~入れ替わってから知った気持ち~
「…今、ここにいない人の悪口を言うのは、良くないと思う」
私がそう言うと、バスの中がザワザワし始めた。
「はぁ?悪口なんか言ってねぇし」
「そうだよー。人聞き悪いこと言わないでよ」
「ってか、あいつが遅れてくるのが悪いんじゃん」
うん。想定内。
怖くない怖くない。
頑張れ、私。
「でも、遅れてる理由もわからないのに、そんなこと言うのはひどいよ」
「いや、だからさぁ。遅れてくるんだったら、普通は連絡するでしょ?」
「なのに連絡しないから、迷惑だなーって言ってんの」
「どうしても連絡できない理由があったら?みんな、そんなの知らないでしょ?」
私が言う。
悪口を言っていた人が言い返してくる。
また私が言う。
そんな繰り返しで、何を言ってもわかってくれない。
いい加減しんどくなってきて、思わずため息をついたのがいけなかった。
それを皮切りに、私への文句が飛んできたのだ。
「うわっ。ため息つきたいのはこっちなんですけどー」
「さっきからさぁ…。お前、山下のなんなの?大して仲良くもないくせに良い子ぶんなよ」
「上から目線でうざい。先生にでもなったつもりですかー?」
…やばい。
こんなに面と向かって言われると、ちょっと泣きそうになってきた。
やっぱり美由希を助けるなんて、私には無理だったのかな…。