森に抱かれて
「だから、俺は…」
「嘘はつかないんですよね」
「その通り」
しょうもない嘘はつくけど、ね。
「あ、でも」
「ん?」
「中里さんが来られるのって、週末だから、まだ喫茶店のお客第1号とは、限りませんよね?」
ニヤっと、笑って見せる。
「フッ、そうだな」
思わず笑った佐藤は、コーヒーを一口飲むと立ち上がり、智子の横を通りかけて、
「まあ、頑張り給え」
と、座っている智子の頭をポンと叩いて、表のドアから出て行く。