森に抱かれて

「は〜い」

智子は佐藤の前に出て、道から逸れて道なき道を沢に向かって下ろうとした時、足元がズリっと滑る。

「あっ!」

昨日の雨で湿って多少ぬかるんだ土は引っ掛かる所も無く、智子はそのままズルズルと沢に向かって落ちていく。

「シンイチっ!」

佐藤の呼びかけも虚しく、智子の滑りは止まらない。

「あ〜っ!あ〜っ!あ〜っ!」

そしてついに、沢の中に落ち、止まった反動で、バッタリ水の中に倒れ込む。

「シンイチっ!」

「うっ…」

倒れた時に鈍い音がし、智子は起き上がらない。

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