森に抱かれて
医師の姿が見えなくなると、佐藤はヘタリと椅子に座り込む。
「…良かった…」
「しっかりしなさい、謙太郎っ」
美咲は佐藤の背中をビシッと叩く。
「ああ。…でも、本当、良かった」
「…まるであの時の、大河ね」
「え?」
佐藤は美咲を見上げる。美咲はゆっくり佐藤の隣に座る。
「大河の代わりに謙太郎がやったライダーキングのスタントで、謙太郎が大怪我して運ばれた時、大河も今の謙太郎と同じように自分のせいだってうなだれてて、手術が成功したって聞いたら、腰が抜けたみたいにしばらく『良かった、良かった』って、へたりこんでた」