森に抱かれて

「あの時いた、あやちゃんって覚えてる?」

「えっ?」

佐藤の口から出た『あやちゃん』に思わずビクッとしてしまう。

「あの子、中里さんの姪っ子なんだってさ」

「へ〜、そうなんだぁ」

いつもより少し高い声が出てしまう。

やだな。なんで、動揺してるんだろ、私。

智子はソソクサとテーブルの上を片付けると、カウンターへ戻り、洗い始める。

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