森に抱かれて

やっぱり客は来ないんだ。

「ま、俺にここ貸す口実に、付き合ってやってくれてたみたいなもんだからな」

「佐藤さんに貸す口実?」

なんだ、それ?

「オーナーの息子さんとお友達なんですか?」

「ああ、まぁ、元同僚」

「へ〜」

「よし、じゃあ、これからも晩飯作ってくれるって言うんなら、そいつに一回来てくれるように連絡とってあげるけど、どう?」

やっぱり、炊事請負人で釣ってきたか。でも、背に腹は変えられないもんね。それに、味オンチなら少々まずくても文句言われそうにないし。

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