ロスト・クロニクル~後編~

 ルシオンが、生きていたら――

 そう、誰もが考える。

 しかし過去を愁えたところで、過去を書き換えることができない。だから一歩一歩と、確実に歩みを進めないといけない。それがクローディアの明るい未来へと繋がり、いつかエルバード公国に打ち勝たないといけないだろう。それにいつまでも、悪が栄えることはない。

「生きておられたら、16歳だ」

「16と申しますと――」

「エイルと同じだ」

「彼は、優秀な成績でメルダースを卒業しました。同い年ということで、いい関係が築けていたかもしれません」

「……そうだな」

「勿体ないことで――」

「ああ、実に……」

 語れば語るほど、心の中に悲しみが広がっていく。そのことがわかるのだろう、シードの言葉は途中で途切れ途切れになってしまう。シードは何かを思うかのように、遠くを見据える。だが、振り払うかのように頭を振ると「イルーズに話に行く」と言い残し、リデルの前を去った。
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