ロスト・クロニクル~後編~
ミシェルは策略を練って動くのではなく、感情で動く。だから此方側があれこれと計画を練っても、ぶち壊してしまう。だから多くが「厄介」とミシェルを評し、頭痛の種と化す。
だから、クリスティの助言を求めた。
イルーズは再び溜息を付くと、気付かれてしてしまった身体を休める為に椅子に腰を下ろす。
そして、手紙の仕上がりを待った。
三十分後――
エイルは手紙を仕上げる。
「これでいい」
「読んでいいか」
「勿論、そのつもり」
エイルから手紙を受け取ったイルーズは、書かれている文字を黙読していく。途中で面白い内容が書かれていたのか、口許を緩めると「本当に、こんなことがあったのか?」と、尋ねる。それに対しエイルは首を縦に振ると、これはクリスティの発案したものと説明しだす。
「相変わらず、凄い方だ」
「だけど、テスト二回免除してくれた」
「これは、本当だったのか」
「嘘は書いていないよ」
「嘘を書いたら、父さんが怒る」
「それは、わかっています。わかっているから、正直に書きました。お陰で、この枚数に……」
「枚数は、気にするな」
あれこれと書いているうちに、最終的な枚数は七枚。書きすぎてしまったとエイルは苦笑したが、イルーズの話では「多い方が、シェラ様が喜ぶ」という。だから次の手紙も、これくらいの量を書くように頼む。
「次?」
「そうだ」
「いや、僕は……」
まさか二回目があるとは思ってもみなかったのだろう、エイルは言葉が続かない。しかしよくよく考えれば、文通は何度も行われるもの。現に父親とアルフレッド相手に、何度も手紙のやり取りをしていた。それに現在のメルダースの内情を知っているのは、エイルしかいない。