ロスト・クロニクル~後編~
珍しく真面目に仕事を行なっているアルフレッドの姿に、リデルは苦笑しつつ「明日、雨が降る」と、呟く。
リデルの本音にエイルは、反射的に噴出してしまう。そして、アルフレッドの信用度は低さを改めて知る。
リデルが抱いている印象は、隊長のシードを含め他の先輩親衛隊も同意権を持つ。その知らされた真実に、アルフレッドは肩を落とす。と同時に、勝手に休みを取れないと気付く。
「ところで、どのようなご用件で……」
項垂れているアルフレッドをよそに、エイルがリデルに訪れた理由を尋ねる。彼からの質問にリデルは咳払いをすると、シードがエイルの剣の腕前を見たいと言っているということを伝えた。
「隊長が……」
「理由はわかっているな」
「……物凄く」
シードが呼ぶ理由は、ひとつしかない。ルークがエイルに手合わせをしたいと言った、あの件である。
あの時、自分の未熟な一面を理解せずに、ルークの誘いに乗ろうとした。だが、意思を示す前にシードに止められた。それにより怪我をせずに済んだのだが、シードの呼び出しをくらうことになるとは――未熟な身分で身に余る行動を取るとどうなるか、痛いほど理解した。
「今……ですか」
「当たり前だ」
「了解しました」
勿論、命令に従う。
だが、長い溜息を付いてしまう。
同じ師のもとで剣を学んだとはいえ、腕前は天と地の差がある。父親のフレイの場合、自分の息子ということで多少は手加減をしてくれるが、シードにその心があるわけがない。それにルークの件も合わさり、本気で向かってくる可能性が高い。その為、結果はもう判明している。
「頑張れ」
いつの間にか復活を遂げていたアルフレッドが、同情たっぷりの視線を向けつつエイルの肩に手を置く。
しかしアルフレッドが、エイルに同情している場合ではない。彼の態度が神経を逆撫でしたのか、リデルの厳しい言葉が飛ぶ。彼は彼で、真面目にきちんと仕事を行なわないといけない。彼女の指摘にアルフレッドは項垂れると、サボらずに仕事を行なうと宣言していた。