ロスト・クロニクル~後編~

「お兄ちゃんの所へ行く」

「お、お食事は――」

「いらないわ」

 兄に会いたい気持ちでいっぱいのシェラは、侍女の静止を振り切って部屋から出て行ってしまう。

 しかし途中でアリアに出会い、行動を止められてしまう。そしてシェラの後から息を切らせ必死に追いかけて来た数名の侍女に理由を尋ねると、無表情だったアリアの眉が微かに動いた。

「そうでしたか」

「だから、お兄ちゃんに……」

「なりません」

「どうして」

「まずは、お食事です」

「お兄ちゃんが待っているもの」

「きちんとシェラ様がお食事をなさらない方が、ご心配されます。ですので、お食事を――」

 アリアの言葉が余程効いたのか、シェアは渋々ながら頷き返す。シェラの返事にアリアは満足そうに頷くと、侍女達にシェラの朝食の用意をするように命令する。アリアの命令に侍女達は返事を返すと、シェラを連れて行く。その姿にアリアは珍しく、盛大な溜息を付いた。




「お兄ちゃん、お兄ちゃん」

「どうした?」

「ちゃんと、ご飯食べたよ。偉い?」

 エイルと会えた瞬間、シェラは飛び付き思いっ切り抱き付く。そしてアリアの言うことを聞いて、きちんとご飯を食べたということを伝えると、褒めて欲しいのか上目遣いで訴えてくる。

「偉い」

「本当!?」

「沢山食べて、大きくならないと。それに、アリアを困らせるようなことはしないことかな」

 流石に大好きな兄に言われたら、従うしかできない。今日はいつもと違って素直なシェラにエイルは、周囲が困らないようにと幾つかの約束をする。「我儘を言わないこと」や「きちんとご飯を食べること」など、どれもが基本的なもの。そのひとつひとつにシェラは頷くと、約束を守ると宣言する。
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