ロスト・クロニクル~後編~
細かい氷に光が反射し、虹が誕生する。
勿論、これに対してもシェラは大喜びした。
彼女にとって魔法を見たのはこれがはじめてなので、魔法は「恐ろしいもの」ではなく「綺麗なもの」と、勘違いしてしまう恐れがあった。後できちんと恐ろしいものと認識してくれればいいとエイルは考えるが、この調子だとなかなか難しいだろう。それに、またせがむかもしれない。
身近で魔法を使えるのは、リデル。シェラの性格を思うと、リデルに魔法を使用してほしいとせがむかもしれない。
どうすればいいか――
そのようなことを考えていると、シェラの言葉が響く。
「ああ、御免」
「もっともっと」
「じゃあ、次は……」
エイルはフッと口許を緩めると、新しい魔法の呪文を唱えだす。そのひとつひとつに、シェラは瞳を輝かせながら見入る。
ほんのひと時の幸福な時間。
その光景にエイルだけではなく、シードも珍しく柔和な表情を浮かべていた。