ロスト・クロニクル~後編~
「メイド達が、心配しているか……と」
「心配性なのか?」
「……かなり」
「なら、尚更自宅の方がいい」
「すみません」
「謝らなくていい。シェラの兄として、頑張っていることは知っている。お陰で、シェラ様は……」
流石に立場上「元気になり過ぎた」とは、言えなかった。ただ、微笑を浮かべながらシェラのことを思う。
それに、これからの未来も――
◇◆◇◆◇◆
幾日振りか――
エイルの帰宅に、メイド達が喜ぶ。
お帰りなさいませ。
心配していました。
具合は、大丈夫でしょうか。
など、早口で尋ねてくる。
だが、手当てされている姿に驚いたのだろう、メイド達の顔が一瞬にして蒼褪める。城で何かが起こったのかとあれこれと聞いているが、メイド達にミシェルが行ったことを話すわけにはいかない。仕方なくエイルは「訓練によって負った傷」と言い訳し、彼女達に嘘を付いた。
「そ、そうでしたか」
「それほど、親衛隊のお仕事は……」
「医師の話では、酷い傷じゃないらしい。だから、そんな顔をされると……結構、困るんだ」
「も、申し訳ありません」
「エイル様が、そんな姿をなさっていたもので……」
彼女達の反応にエイルは苦笑するが、心配する気持ちは理解できる。しかしそれ以上に気に掛かるのは、マナの存在。いつもの彼女であったら控え目に後方で待機しているのだが、今は見掛けない。
何をしているのか気になったエイルは、マナの一番の友人であるジャネットを呼び寄せると、マナが何処にいるのか尋ねる。エイルからの質問に、ジャネットは周囲を見回すと「先程まで、隣にいたのですが……」とあたふたし、エイルにマナを捜しに行くと申し出る。