ロスト・クロニクル~後編~
と、エイルは母親に話していく。
その説明に、シーナは唖然となってしまう。
しかしどこか面白かったのか、クスっと笑う。
「母さん?」
「貴方がそうやって、昔のことを話すのが珍しくて。それにメルダース時代、楽しかったのね」
「楽しいというか、何というか……」
思い出すのは、数々の事件や事故。
それに、ラルフへの仕置き。
決して褒められる日々ではないが、充実した毎日だったといっていい。その結果が、悪友関係となる。
「前にも言ったように、貴方は明るくなったわ」
「あいつに会ったら、明るくならないといけないよ。勉強していても、邪魔をされたり……」
「でも、楽しかったのでしょう?」
「はい」
「こうやってゆっくりと話せる機会がなかったのだから、メルダース時代の話をしてほしいわ」
「どこから、話せばいいか……」
「入学当初からお願いするわ」
「その時は……」
過去を思い出しつつ、エイルは語る。
どのようなことがあって、どのように対処したのか。
また、学園長はどういう人物か。
面白おかしく、時には愚痴を交えた話は、シータを楽しませる。シーナはクスクスっと笑い、時に「本当なの?」と、聞き返す。母親の質問にエイルは頷き、更に話を進めていく。
授業の時。
進級試験の時。
話は尽きない。
それだけ、メルダース時代は充実していた。
「最初は、困っていたわね」
シーナの言葉にエイルは、何も言えなくなってしまう。メルダースに入学し高い知識と技術を習得したいと思っていた反面、父親との約束を本当に果たせるのか不安が強かった。もし失敗したとなれば、父親に合わせる顔はない。その不安が大きく、緊張しないといったら嘘になってしまう。