ロスト・クロニクル~後編~

 と、エイルは母親に話していく。

 その説明に、シーナは唖然となってしまう。

 しかしどこか面白かったのか、クスっと笑う。

「母さん?」

「貴方がそうやって、昔のことを話すのが珍しくて。それにメルダース時代、楽しかったのね」

「楽しいというか、何というか……」

 思い出すのは、数々の事件や事故。

 それに、ラルフへの仕置き。

 決して褒められる日々ではないが、充実した毎日だったといっていい。その結果が、悪友関係となる。

「前にも言ったように、貴方は明るくなったわ」

「あいつに会ったら、明るくならないといけないよ。勉強していても、邪魔をされたり……」

「でも、楽しかったのでしょう?」

「はい」

「こうやってゆっくりと話せる機会がなかったのだから、メルダース時代の話をしてほしいわ」

「どこから、話せばいいか……」

「入学当初からお願いするわ」

「その時は……」

 過去を思い出しつつ、エイルは語る。

 どのようなことがあって、どのように対処したのか。

 また、学園長はどういう人物か。

 面白おかしく、時には愚痴を交えた話は、シータを楽しませる。シーナはクスクスっと笑い、時に「本当なの?」と、聞き返す。母親の質問にエイルは頷き、更に話を進めていく。

 授業の時。

 進級試験の時。

 話は尽きない。

 それだけ、メルダース時代は充実していた。

「最初は、困っていたわね」

 シーナの言葉にエイルは、何も言えなくなってしまう。メルダースに入学し高い知識と技術を習得したいと思っていた反面、父親との約束を本当に果たせるのか不安が強かった。もし失敗したとなれば、父親に合わせる顔はない。その不安が大きく、緊張しないといったら嘘になってしまう。
< 219 / 223 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop