ロスト・クロニクル~後編~
ラルフの様子を見に行こうかな。
と、思えてくる。
真面目にやっているかどうかの監視――というわけではなく、元気でやっているか見たいのだ。
あの場所には厳しい面々が揃っているので、不真面目なことはやっていないだろう。それにラルフが「女神様」と呼ぶマリサもいるので、彼女が日々葉っぱを掛ければ真面目に仕事を行う。
これもまた、女神の導きか。
実に運命は面白いと、エイルは考える。
「ところで、エイル」
「何?」
「メイドの一人と、仲がいいそうね」
「誰が、そんなことを――」
「リンダが言っていたわ」
流石、メイド長というべきか。
メイドの行動ひとつひとつを把握している。
シーナが言うメイドというのは、勿論「マナ」のことを示す。マナとは話し易く、何より彼女は頑張り屋で自分を見ているかのようだ。それに気が利くし、帰宅と当時に紅茶を用意してくれた。
「あら、飲んでいたの?」
マナに紅茶を淹れて貰ったことを内緒にしておくはずだったが、ついつい口を滑らせてしまう。反射的に口許を抑えるが、一度言葉に出してしまったモノを取り消すことはできない。黙っていたことによって母を悲しませてしまったと、エイルは思わず項垂れてしまう。
「ご、御免」
「いいのよ」
「いや、本当に……」
「でも、仲がいいのでしょう?」
「まあ」
「それなら、心配ないわ」
「どういう意味?」
「意味はないわ」
とシーナは言うが、エイルは今の言葉に意味ないわけがないと考える。しかし母親相手に追及するのも気が引けるので、ここは黙っておくことにする。エイルは温くなってしまった紅茶を口に含むと、シーナにマナとの関係を知られてしまったと、渋い表情を浮かべた。