ロスト・クロニクル~後編~

第二話 北の就職活動


 ラルフと共に屋敷に戻ったエイルは、父親のフレイにラルフという人物に付いて説明していく。現在のクローティアの内情を考えると、不審者を屋敷に向かい入れるのを躊躇うが、メルダースの卒業者で尚且つクリスティに目を付けられていた問題児だったと聞き態度を改める。

 フレイが考えを改めたのは「クリスティに目を付けられた問題児」という部分。あの地上最強の魔女に目を付けられているということは、下手な行動を起こせない。それに此方側はクリスティを味方に付けているので、ラルフが敵側に内通していると知ったら彼女自ら粛正に赴く。

 そのように説明した後、エイルはフレイに別の要因も話していく。彼は校則を破り怪しい研究と実験を繰り返した結果、メルダースの建物の一部を破壊しつくした。結果、クリスティ相手に大量の借金を抱え、尚且つ就職先でも建物を破壊し此方側でも借金をこさえた。

 総額は天文学クラスで「踏み倒し禁止」とクリスティに念を押されていると、付け加える。よってラルフがクローディアを訪れたのは、借金返済の為に新しい就職先を探しに来たのだった。

 また、それ以前にラルフが裏切るというのは考え難い。借金で首が回らない状況に置かれているが、どちらかといえば友情の方を優先するので、金で魂を売ることは絶対に有り得ない。

「見込みはあるのか?」

「無理でしょう」

「そうか。しかしお前の話を聞いていると、無碍に扱うわけにもいかない。で、就職先だが……」

「いい場所はありますか?」

「鉱山はどうだ」

「人手が足りないのですか? そのようなことを聞いたことはありませんが……確かにいい場所ですが」

「あの場所は、人が多い方がいいと聞く。それに若いうちに支払わないと、後がきつくなる」

「確かに」

「お前から、言っておくように」

「わかりました」

 常識を逸脱している借金を返済するということは、フレイが言うように普通の職場では無理だ。それにクローディアで採掘されている〈水晶〉は世界的に有名で、高い金額で取引されている。必然的に採掘に携わる者の給料も高く、借金返済に最適の職場といっていい。
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