ロスト・クロニクル~後編~

 フレイと話を終えたエイルはラルフに脅しを含めて、決定した内容をラルフに話していく、勿論、今回の件に関して全力で拒絶の意思を示してきたが、エイルの脅しですぐに撃沈した。


◇◆◇◆◇◆


「本当!?」

「何故、嘘を言わないといけない」

「だって、メルダース時代が……」

「あの時はあの時だよ。それにお前には借金の返済をして貰わないと、とばっちりを受ける」

「た、確かに……」

「後で父さんが紹介状を書いてくれるから、僕と一緒に新しい就職先に行こう。多分、明日」

 しかし新しい就職先が気に入らないのか、いまいち反応が悪い。ラルフの本音ではメルダースで学んだ知識を最大限に活用したいのだが、エイルが提示した就職先は水晶が採掘される鉱山。

 体力勝負の仕事以外の仕事がいいのだが、エイルを頼ってクローディアを訪れた身分、我儘を言ってはいられない。それ以前に現在のラルフに「職業選択の自由」というものはなく、借金返済を最優先に考えないといけないので与えられた就職先を素直に受け入れるしかない。

 それでも「何故、就職先が鉱山になってしまったのか」という理由はハッキリしたいらしく、その点を尋ねていく。ラルフ曰く、クローディアの中心都市にやって来たのだから複数の職があるはずなのに、どうしてその中で一番厄介で難関の職業が選ばれたのだろうか。

 背負っている借金の金額を本当に知っているのかどうか怪しい発言に、エイルは鼻で笑う。真面目に借金返済を考えている点は褒め称えていいが、ラルフは肝心な部分を忘れている。

 これから先、ラルフはクローディアで一人暮らしをしないといけない。勿論、バゼラード家が金銭面で援助するわけがなく、借金返済と共に生活費を自分の力で稼がないといけない。だから手っ取り早く高額な金を稼げる鉱山が一番いいと、フレイはこの職業を選んだ。

 エイルの丁寧な説明で職業の面は納得したのだが、今度は別の面で食い掛かってくる。これこそ図々しいというべきか、ラルフはエイルと共にこの屋敷で生活を送れると考えていたという。また、この夢のような生活スタイルを手放したくないので、借金返済以上に必死だった。
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