ロスト・クロニクル~後編~
アルフレッドの態度に、シードは溜息と共に肩を竦めてしまう。しかしアルフレッドはシェラの目の前で宣言しているので、心を入れ替え素晴らしい隊員に成長して欲しいと期待する。
それよりシードが一番気に掛かっているのは、エイルの言動だった。シェラとの謁見を一番強く引き摺っているのか、なかなか立ち直る気配を見せない。だからといってエイルだけを特別扱いをするわけにはいかないので、アルフレッドとシンに彼のことを任せることにする。
シードの命令に、アルフレッドとシンが背筋を伸ばし同時に敬礼を行う。しかしなかなか現実に戻ってくることができないエイルの耳に、やはりシードの言葉は届いていなかった。
身体を硬直させ一点を凝視しているエイルを見兼ねたアルフレッドが彼の身体を肘で叩き、意識を覚醒させようとする。手加減なしの一撃にエイルの意識は瞬時に覚醒し、反射的に周囲を見回す。
「あっ!?」
「何している」
「わ、悪い」
アルフレッドからの痛い合図によって、同僚がシードに向かい敬礼していることに気付く。彼等の行動に従うようにエイルも敬礼を行うが、いつものような覇気は感じられなかった。
方法は任せるので早くエイルの精神面での回復を図るようにと、シードはアルフレッドとシンに目線で合図を送る。隊長からの命令に彼等は頷き返すと、立ち去るシードを見送る。
「……御免」
「さっきから、おかしいぞ」
「時間が経てば、平気だよ」
「そうならないから、俺達が心配している。よし、今度の休みの時は俺の実家に遊びに来るといい」
「何故?」
「いいじゃないか」
「面倒」
「そう言うな」
「一人で行けばいい」
エイルにしてみれば、どうしてアルフレッドの実家に遊びに行かないといけないのかと、不満たっぷりで言葉を返す。その言い分にアルフレッドは自分の実家は牧場なので、家畜を見ればいい気分転換になるという。また、牛の乳搾りや羊の毛刈り体験もできると勧誘する。