ロスト・クロニクル~後編~
「本当に行くのか?」
「牧場?」
「アルフレッドの性格を考えると、いいように利用されるかもしれない。それでもいいのか?」
「あいつの性格は、嫌というほどわかっている。だけど、あいつの気持ちは受け取らないと」
今回の誘いの目的の半分はアルフレッドの私情が混じっているが、残り半分はエイルのことを思い自分の両親が経営している牧場に誘った。勿論、シンが心配しているように彼の牧場に行って何もないわけがないが、だからといって無碍に断れないというのがエイルの意見。
「……確かに」
「それに両親の前で、馬鹿なことはしないよ。あのように見えて、公私の使い分けは上手い」
「そう……だな」
そう言いつつも、日頃の彼の不真面目な態度を何度も目撃しているので不安感が拭いきれない。シンはいまだに感動に打ち震えているアルフレッドを横目で眺めると、確信が欲しいのか「本当か?」と尋ね、牧場で何かトラブルが発生したら隊長に報告した方がいいとアドバイスを送る。
アルフレッドと正反対の性格のシンは、エイルの身を心配する。彼女にしてみればエイルは自分と同じく真面目に仕事をこなす人物と見ているので、アルフレッドにいいように利用されたくないと考えていた。だからこそこのようにアドバイスを送り、彼の立場を守る。
不真面目の代名詞がアルフレッドであれば、真面目の代名詞はシンといっていい。対照的な二人にエイルは、自分の周囲に集まってくる人物の悲喜こもごもに笑うしかできなかった。
◇◆◇◆◇◆
その夜、シードは新人隊員の謁見に付いてリデルに語っていた。勿論、新人隊員の反応は最初からわかっていたが、彼等の反応をシードの口から聞くとリデルの気分が重くなっていく。
やはり。
それが、リデルの感想だった。だからといって親衛隊の一員となった今、現実から目を背けるわけにはいかない。それが辛い現実であったとしても受け入れ、自分の役割を果すまで。だがシード同様に、リデルもシェラを目の前にし感情を揺さぶられたエイルの存在が気に掛かる。