ロスト・クロニクル~後編~

 最高峰の学問を修め、知力と高い魔法力を身に付けたエイル。これで弱い精神面を鍛えることができれば、素晴らしい親衛隊に成長する。それはエイルだけではなく、アルフレッドやシンにも心技体を兼ね備えた人物に成長し、クローディア王家を影で支えて欲しいと願う。

「という訳だ、これに関しては他の者達には他言無用。病欠とでも、言い訳をしておけばいい」

「しかし、アルフレッドは……」

「あの者の場合は、病欠は無理か」

 筋肉隆々で元気が取り柄のアルフレッドが、病欠というのは有り得ないし真っ先に怪しまれる。言い方を悪くすれば、アルフレッドは病原菌が寄り付こうとしない特別体質。別のいい言い訳を考えないといけないが、シードやリデルは言い訳を簡単に考えられる人物ではない。

 親衛隊の隊長と副隊長を務める上で、自分を保守する言い訳を使用してはいけない。それ以前に、エイルの悪友のラルフのようにその場しのぎの言い訳で生きている人物ではない。

「何か仕事を与えては如何でしょう。ただ、難しい内容では彼よりシンの方が適任になってしまいますが」

「仕事……か」

「彼は、何と申しますか……体力は、隊の中であの者に勝る者はいません。それを利用して……」

「肉の壁か」

「いえ、そういう意味で言ったわけではありません。ご気分を害されましたら、すみません」

「いや、リデルの言い方は正しい。現に、そのような理由でアルフレッドを選んだのだから」

 言い訳を考えるのに参考になる意見を言ってくれたことに、シードは感謝する。といって瞬時に言い訳が思い付くわけではなく、明日までには言い訳を考えておくとリデルに伝える。

「さて、部下達の様子を見て来よう」

「では、後のことは――」

「頼む」

「はい。シード」

 シードはリデルを信頼しているからこそ、自分が担っている役割の一部を彼女に任す。絶大な信頼を受けているリデルは背筋を伸ばした後、シードに向かい深々と頭を垂れる。彼女の凛とした態度に満足そうに頷き返すと、自身は言葉の通り部下の様子を見に向かった。
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