ロスト・クロニクル~後編~
アルフレッドと付き合っているというより、どちらかといえば付き纏われているといっていい。珍獣ラルフより何十倍もマシといえなくもないが、がさつな面が目に付く。しかしラルフと違い相手の感情を読むのが上手い点は感謝しているが、褒めるのは癪なので言葉に表さない。
「その……本当に……」
「でも、このように一緒に息子について来てくれる人物がいるだけで嬉しく……ねえ、あなた」
「昔から協調性に問題がある愚息で、仲間ができるかどうか心配だった。協調性がない他に、がさつで……それでも親衛隊に入隊できたというのは、剣の腕前が認められたのだろうか?」
「は、はい」
「それは凄い」
「努力が、認められたのね」
彼の両親の喜び方に、アルフレッドの入隊理由を話すことはできない。シードは彼を親衛隊のいい壁として期待し、入隊を認めた。そもそもそのような理由で入隊は前代未聞で、後にも先にもアルフレッドしかいないだろう。それを考えると、彼はある意味貴重といえる存在である。
「剣で身を立てる」と言っていた息子とが、その剣の腕前が認められ親衛隊の一員となった。エイルの話からそれが現実だと知ったアルフレッドの両親は、余程嬉しかったのだろう互いの表情が緩みだす。真実を知らない彼の両親の姿に、エイルは肉の壁について話せないでいた。
「見たところ、うちの愚息より立派な方のようだが……このような人物が同僚なら、心強い」
「い、いえ……僕は……」
エイルは「立派」の単語に過敏に反応を示すが、それは嬉しいからではない。立派と呼べるほど何か素晴らしい功績を残したわけではなく、立派の言葉が似合うのは自身の父親や親衛隊の隊長を示す。だからエイルは両手を振り、自分は立派な人物ではないと否定する。
まだまだ自分は未熟な面が強いということで、エイルは否定した。しかし彼の否定に対し「違う」と言い放つのがアルフレッド。どのように否定しようが、エイルの一族は爵位を持つ貴族。立派な家系なのは間違いないので、自分の家系を否定してはいけないと注意する。
アルフレッドは普通に注意を行なっていたが、普通に受け取ることができないのが彼の両親。エイルが貴族の人間と知ると動揺しだし、息子に「何故、早く言わなかった」と大声で怒り出す。また貴族とわかった今、どのようにおもてなしをすればいいかアタフタしだす。