戻りたい。戻れない。
好きになるなんて
あの人の何処が好きなのかと問われたら、はっきりとこういう所が好きなのだと返すことはできない。
ただ漠然と、好きという感情が私の心を支配して止まないのである。
どれだけ振り回され、その言動に傷付き、どれだけの涙を流そうとも。
決して、嫌いになることは不可能だったのだ。
嫌いになれたのなら、どれほど楽なのだろう。
そんな短絡的な考えを何度繰り返したかさえ知れなかった。
自分自身が、こんなにも一人の男性を愛し、
ーーーーこんなにも恋に溺れるとは、夢にもみなかったのである。
「ねぇ、大好きだよ」
心を込めて彼に送る愛の言葉。
「ありがとう」
彼から帰って来るのは愛情の鱗片すら感じられない言葉。
感謝の意味が込められているはずの言葉なのに、彼から送られて来るそれは、ただの文字の羅列でしかなかった。
実際、彼からすれば、私の想いは有難迷惑を通り越してただの迷惑でしかないのだろう。
それでも、愛されていないと知りながらも、私は彼の傍にいたかった。