戻りたい。戻れない。
「お仕事お疲れ様。おかえりなさい」
「ん、ただいま」
私と彼は、毎晩欠かさずに通話をしていた。
彼は仕事している身であったから、
私は彼の仕事が終わる時間まで起きていて、彼からの着信を待つ。
それが生活の一部になりつつあった。
「そういえば、誕生日いつだっけ?」
「あたし?あたしは11月18日だよ!ミッキーと同じ誕生日なんだ」
「もうすぐじゃん」
「そーだねー。そっちは?」
「俺は6月14日」
「えー!今年もう過ぎちゃったじゃん!」
「うん。だからクリスマスプレゼントは頂戴」
「わかった!」
互いの誕生日すらろくに把握していない。
世間からすれば異常かもしれないが、私達にとってはそれが、普通、であった。