戻りたい。戻れない。
「どれがいい?」
彼に問われ、私はもう一度ショーケースの中を凝視する。
一つはラインの入ったシンプルなもの。
もう一つは"Forever"と刻んである可愛らしいもの。
「う〜ん…」
優柔不断な私は悩みに悩む。
最終的に見た目で決められなくなった私は値段で決めることにした。
ラインの入った方はペアで1万。
刻印の入っている方はペアで2万。
「こっちがいい…かな」
少しでも彼に支払わせる額を減らそうと思った私はラインの入ったものを指指した。
「ホントに?値段で選んだりしてない?」
意図も簡単にバレておりました。
「してないよっ」
なんとか誤魔化すけれど、彼の訝しむような視線が私に突き刺さる。
「すみません、このリング。9号と13号ってありますか?」
私たちのサイズのリングが在庫にあるか店員さんに確認してもらうと、彼の方はあったのだけれど、私のサイズのものが無かった。
購入するとなると、注文して後日届いた品物をお店まで取りに来なければならないと言われてしまう。
「もう一方のものでしたらございますが、どうなさいますか?」
店員さんに問われる。
「今日、欲しいよな?」
「えと……うん」
彼は仕事の休みが不規則なので、日曜日が休みとは決まっていない。
その為、学生をしている私と休みが一致することは稀で、月に2回会えれば良い方だった。
次にいつ会えるかもわからない。
そんな状況を考えたら、彼との確かな目に見える繋がりがすぐに欲しくなった。
「じゃあ、こっちください」
結果、Forever…永遠という意味のペアリングを彼に買ってもらった。
左手の薬指に、彼にペアリングをはめてもらう。
照れ臭くて何も言えなかったけれど、一生の思い出になるのだろうとこの時は思っていた。