3センチの恋。
プロローグ

「あのさあ、真紀は好きな人とかいないわけ?」

“真紀”と呼ばれる少女は、幼い頃からの友達“佐野 遥”に迫られていた。恋バナは女子の間で当然のように話されているが、真紀こと“橋本 真紀”はその恋バナが大の苦手だった。

「あのね、遥。恋すりゃ偉いってわけじゃないの。あんただって恋してないじゃん」

そう言いながらいつも上手く交わすのだが、今回はそうもいかなかった。

「私もね、今までずっとそう思ってたんだけどさあ……」

遥の反応がいつもと違ったのだ。まさかこいつ、好きな人でも出来たのかと疑り深い目で見つめる真紀。
だが、そうでもなさそうだ。
なぜなら、遥の身だしなみを見ればわかる。髪はボサボサで女の子らしくない。スカートのしたからはいつもジャージが履かれている。
そんな遥に恋なんてできるはずないと思っていた。

「でもさあ、私思うんだよね! 女子って恋愛に興味ないって思ってる人ほど激しい恋をするんだよ」

遥は恋愛初心者のくせして、語り始める。多分、少女漫画でも読んだのであろう。語りがいつになく感情が入っていた。
でも真紀は、遥が語り出したら止まらないことを長年の付き合いでわかっていたため、決して耳を向けなかった。

「……恋ねぇ」

ポツリと呟いた真紀だったが、その声は今だに語り続けている遥の声でかき消されて行ったのだった。

***
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