ママと呼ばれたい ~素敵上司の悲しすぎる過去~
「うーん、どうなんだろうね。あの人のプライベートな話は聞いた事がないからね」

「そうですか……」


年齢的にも、あの容姿からしても結婚していて不思議はないけども、できれば独身だといいのにな、と私は思った。


「課長、なんだか新藤さんの事を前から知ってるみたいに聞こえますけど、知り合いなんですか?」

「わたしもそう聞こえたわ」


佐藤さんと渡辺さんが課長の言葉に食いついた。

ああ、そういう事か。二人とも新藤さんの正体に気付いてないのね。だからずれたような事を言ってるんだわ。


「君達は新藤さんがどこから内に移ってきたか知らないようだね?」

「知りません。どこからですか?」

「日電さ」

「に、日電!? 本当ですか?」

「本当だよ。君達は知らないかなあ。日電の新藤と言えば……」

「げっ。もしかして、“ミスター日電”ですか!?」

「うそっ。あの大ヒットCMを次々と企画した人ですか? 早くも“伝説の広告マン”って言われてるんですよね?」

「そう。それが新藤さんさ。うちらの新しい部長の」

「ひぇー!」


佐藤さんも渡辺さんも、目を丸くして文字通り絶句した。今頃気付くなんて遅いと思うけどね。私なんか、人事発令を見てすぐ気付いたもんね。

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