ママと呼ばれたい ~素敵上司の悲しすぎる過去~
『ナビにセットしたいんで、住所を教えてもらえるかな?』

「あ、はい」


私は自宅の住所を新藤さんに告げた。


『えっと……よし、出来た。約1時間後に着くけど大丈夫かな?』

「はい。それは大丈夫ですけど、新藤さんってもう……」

『そうなんだ。もう車に乗ってるんだよ。まみが朝からせがむもんだからね』

「ああ、そうなんですね……」

『じゃあ、近くに行ったらまた電話するから』

「はい。お気を付けて」


はあー。新藤さんとまみちゃんが、わざわざ私に会いに来てくれるのかあ。何だか夢を見ているみたい……

なんて、悠長にしてられないわ。1時間で支度をしなくっちゃ!


私はベッドから飛び起き、大急ぎで朝シャンして髪をセットし、メイクをして着替えをした。と言っても、車で遊園地へ行くそうだし、まみちゃんと遊ぶのがメインなのだから、余所行きの服装は不適当と思われ、動きやすいパンツルックにしたので、要するに通勤の時と大差ない恰好になっちゃったのだけど。


「どうしたの? 起き抜けにバタバタ騒いだりして……」


エプロンをして、たぶんクッキーか何かを作ってるらしい母が、私を見て呆れ顔で言った。


「新藤さんが来るのよ。まみちゃんも一緒に」

「あらま。大変!」

< 101 / 197 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop