ママと呼ばれたい ~素敵上司の悲しすぎる過去~
それから数時間が過ぎ、部屋に明かりを灯す頃になった。私が新藤さんの寝込みを襲った件については、あれからお互いに全く触れていない。

私が言い出さないのは、恥ずかしいのと、どう切り出していいのか分からないのと、まみちゃんが常に側にいて、言い出すきっかけが掴めなかったから。

でも、私は言いたい。新藤さんに謝りたいし、その流れで気持ちを告白してしまいたい。

新藤さんが言い出さないのはなぜなんだろう。

ああ。きっと私が言うのを待ってるのね。という事は、少なくても怒ってはいない、と思っていいのかしら……


「もうこんな時間なんだな……」


新藤さんは部屋の明かりを灯し、カーテンを閉めながら誰に言うともなく言った。でも、実際は私に向けての言葉だと思う。はっきり言えば、“帰れば?”という意味の意思確認だと思う。

常識で考えれば、もうずいぶん長居したし、そろそろ夕飯の時刻なのだから、おいとますべきだろう。でも、私はまだ帰りたくない。今のままでは中途半端な気がして……


「りなちゃん?」


ボーッとしてたら、まみちゃんに声を掛けられた。


「なあに?」

「おぷろはいろ?」


まみちゃんは少し首を傾げ、黒目がちの澄んだ瞳で私に懇願するように言った。

お風呂ねえ……いいかも。長居出来るし、お風呂上がりの色香で、新藤さんに迫ったりして。私にどれだけの色香があるかは分からないけれども。


という事で、まみちゃんに、“うん”と言おうとして口を開きかけた瞬間……


ピンポーン


またしても玄関のチャイムが鳴った。来訪者を告げるチャイムが、昨日と同じく……

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