ママと呼ばれたい ~素敵上司の悲しすぎる過去~
その後、私はどうやって家に帰ったのか覚えていない。新藤さんとは、駅で別れるまで何も話さなかった。ご挨拶ぐらいはしたと思うけど。


私は自分の部屋に戻ると、暖房のスイッチを入れてゴロンとベッドに横たわった。着替えもご飯もお風呂も、何もする気力がない。このまま寝ちゃおうかなと思ったら、コンコンとドアがノックされた。


母だろうけど、億劫だから返事をしなかった。そのまま諦めてくれればいいな、と思ったのだけど、


「開けるわよ?」


という声と同時にドアが開いた。


「本当に夕ご飯は要らないの?」

「要らない。それより、眠くって……」

「何かあったの?」

「え? 何も……」

「それは嘘ね。どう見ても、何かあったって顔してるもの」


母は私に近付くと、すとんとベッドに腰を下ろした。何としても私から話を聞き出そう、という腹らしい。


「ねえ、話してみない? 話せば楽になるって事もあるわよ?」

「う、うん……」


母には話してもいいかな。新藤さんとの事を……

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