ママと呼ばれたい ~素敵上司の悲しすぎる過去~
私は今日の出来事を要約して母に話した。恥ずかしいけど、新藤さんが眠ってる時にキスした事も、もちろん帰りに気持ちを告白した事も……


「そうだったのね……。それであなたは落ち込んでいるの?」

「うん……」

「バカね……」


母に慰めてほしいとは思わなかったけど、“バカ”って言われるとは思わなかった。しかも笑顔で。


「なんでバカなの?」

「だって、彼の反応は想定内だもの」

「想定内?」

「そう。それとも、あなたは違う反応を期待してたの?」

「それは、まあ……」

「それは無理もないけど、高望みはダメよ。一歩前進したと思わなくっちゃ……」

「そうかなあ」

「そうよ。しかも有望だと思うわよ?」

「有望?」

「あたなの話を聞いた限りだけど、そう思うわよ?」


私はむくっと体を起こした。


「どんなところが?」

「そうね……。彼はあなたの気持ちを知って、嫌がったりしてないでしょ? 一応拒みはしたけど、仕方なくという感じじゃないかしら。たぶんだけど、彼もあなたに好意以上の気持ちを持ってるって、私は思ったわ」

「ほんとに?」

「私の勘だけど、間違いないと思うわよ?」


新藤さんも、私の事を?
だとしたら、嬉し過ぎる……


キュルキュル


突然、私のお腹が鳴った。我ながら現金なもので、気分が晴れたらお腹が空いてしまったみたい。


「ご飯食べたら?」

「食べようかなあ。今夜のおかずは何?」

「あなたの好きなビーフシチューよ?」

「うわあ。食べる食べる」

「現金な子ね? じゃあ、着替えて降りてらっしゃい?」


母はクスクス笑いながら部屋を出て行った。


一歩前進かあ。よーし、頑張ろうっと!

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